令和9年度修学旅行における教育民泊についての再質問・意見
お忙しい中、資料をご作成いただきありがとうございました。
一方で、今回の回答については、私たちが最も確認したかった安全管理及び重大事故時の責任体制の核心部分が、なお十分に明確になっていないと受け止めています。
今回の資料では、安全対策について一定の説明が示されました。
しかし、重大事故発生時の責任関係、教員が現場へ到着するまでの具体的な対応体制、複数の事故等が同時に発生した場合の対応能力、受入家庭の自家用車による移動中の責任範囲等については、保護者が具体的に判断できるまでには至っていません。
なお、今回の回答によって初めて具体的に確認できた安全情報も多くありました。
こうした事項は、保護者から個別に質問があった場合に初めて示されるのではなく、教育民泊を学校行事として実施する際の基本情報として、事前に説明されるべきものではないかと考えます。
また、学校資料では、民泊について「地域理解の深化」「主体性の向上」、不慣れな環境での経験を通した「状況判断力や柔軟性」の育成等、大きな教育的意義が示されています。
こうした教育効果が期待されること自体を否定するものではありません。
しかし、添付された2014年度・2018年度の生徒アンケートは、主として満足度、自己評価、自由記述等を示すものです。2014年度には「民泊評価平均9.04/10点」とされていますが、対象となった生徒数、回答率、記名・無記名の別、質問票全体、集計方法、自由記述の抽出基準等は確認できません。
また、「主体性」「地域理解」「状況判断力や柔軟性」といった、学校が掲げる教育効果がどの程度得られたのかを客観的に検証できる資料にもなっていません。
過去の生徒が民泊を楽しく、有意義な経験として受け止めたこと自体を否定するものではありません。
しかし、参加後の満足度と、教育効果の検証、そして安全管理の妥当性は、それぞれ分けて考える必要があります。
短期間の交流体験には価値がある一方、その体験から得られる教育効果を過度に一般化して評価することには慎重であるべきだと考えます。
保護者として求めているのは、「多数の受入実績がある」「過去の生徒の満足度が高かった」という説明だけではなく、万一重大な事故やトラブルが発生した場合まで含め、今回の計画がどのような安全管理と責任体制の上に成り立っているのかを具体的に確認できる説明です。
その観点から、以下について改めてご回答をお願いいたします。
民泊中の重大事故発生時の責任・補償体制について
学校資料では、「学校行事として実施する修学旅行ですので、責任を持って安全対策を講じる」とされています。
一方、旅行会社については、「受入家庭での自由行動中に発生した事故、食中毒、盗難など、旅行会社が管理または関与し得ない事由」による損害について、賠償責任の対象外となる場合があるとされています。
さらに、民泊中の体験活動では、基本的に受入家庭の自家用車で移動することが示されています。
このため、以下について、現時点で学校・旅行会社等の間で整理されている管理上・契約上の責任分担、加入保険及び対応窓口をご回答ください。
1.事故・事案類型ごとの責任体制
次の事案が発生した場合について、現時点で想定されている責任主体及び対応主体をお示しください。
- 受入家庭内での重大事故
- 受入家庭の構成員・同居者等による生徒への加害行為
- 受入家庭の自家用車による移動中の交通事故
- 共同調理・食事等による重大な健康被害
- 緊急対応の遅れ等によって被害が拡大した場合
法的な最終責任が事故の具体的状況によって判断されることは承知しています。その上で、実施前の現時点で定められている管理上・契約上の責任分担についてご回答ください。
2.各関係主体の責任範囲と補償
学校設置者である埼玉県、東武トップツアーズ、現地受入団体、受入家庭、車両の運転者・所有者等について、それぞれ現時点で想定されている責任範囲をお示しください。
併せて、事故発生時に利用が想定されている保険・補償制度及び、保護者が最初に相談・請求を行う窓口についてもお示しください。
3.受入家庭の自家用車による移動の位置付け
特に、民泊プログラムの中で基本的に利用するとされている受入家庭の自家用車について、次の点を明確にしてください。
- 東武トップツアーズが旅程管理・手配する旅行サービスに含まれるのか
- 「受入家庭での自由行動」として扱われるのか
- 交通事故による重傷・死亡時に、各主体がどのような対応・責任を負う想定なのか
- 自賠責保険、任意保険、旅行会社の特別補償その他、利用が想定される制度
- 保護者が最初に連絡すべき窓口
4.受入家庭自体に問題が生じた場合の保護・退避体制
今回の回答では、生徒が受入家庭に相談しづらい場合には、教員本部の携帯電話へ直接連絡できることが示されました。この点は重要な対応だと考えています。
その上で、盗撮等のプライバシー侵害、不適切な接触・言動、暴力その他、生徒が受入家庭に強い危険や恐怖を感じた場合について、次の点をお示しください。
- 生徒を当該家庭から離す判断基準
- 誰が生徒を迎えに行くのか
- どこへ一時退避・宿泊させるのか
- 夜間を含めた退避手段
- 同時に複数家庭で同様の事案が発生した場合の対応体制
5.学校の危機管理上の位置付け
学校保健安全法第29条では、危険等発生時に職員が取る措置の具体的内容及び手順を定めた「危険等発生時対処要領」の作成が定められています。
今回想定されている民泊中の重大事故、対人トラブル、家庭車両での事故等について、学校の危険等発生時対処要領にどのように位置付けられているのか、該当部分またはその内容をご提示ください。
6.回答方法について
法的責任の最終判断が個々の事故の状況によって異なることは承知しています。
そのため、「事故の状況によって異なる」「関係機関と連携して適切に対応する」といった一般論ではなく、現時点で学校・旅行会社・受入団体等の間で定められている責任分担、保険・補償制度、緊急時の対応手順及び保護者の窓口について具体的にご回答ください。
今回の資料からは、重大事故や、受入家庭そのものに起因するトラブルを含む最悪の事態まで想定した対応体制について、なお十分に確認することができませんでした。
学校には、教育的意義とともに、保護者から生徒の安全を託されている学校行事であることを前提として、重大な事態まで想定した具体的な説明をお願いしたいと考えています。
補足:保護者・生徒の不安を把握する必要性について
参考資料として、海老名市が2017年に実施した「保護者負担経費検討に係るアンケート」に関する資料を添付します。
この調査は教育民泊そのものを主目的としたアンケートではありません。しかし、11,439人を対象に実施され、1,481人から回答があり、その後の検討では、修学旅行について「民泊の意義」「民泊先による体験の差」「安全面」「保護者への説明機会」等が課題として整理されています。回答率は12.9%であり、この結果をそのまま全国または本校の保護者全体に当てはめることはできませんが、通常の申し出だけでは見えにくい懸念が、アンケートによって表面化することがある一例として参考になると考えています。
また、本校においても、生徒及び複数の保護者から民泊への不安の声があると承知しています。
不安を抱えて参加した生徒が、結果として「楽しかった」「行ってよかった」と感じることは、もちろん喜ばしいことです。
しかし、その結果をもって、事前の安全設計や責任体制が十分だったと評価することはできません。
多数の受入実績や参加後の満足度ではなく、事故やトラブルが起こる可能性を前提として、どのような安全管理と責任体制が整えられているかを検証することが重要だと考えます。
また、本人から反対の申し出がないことを、民泊を希望・了承していることと同一視することもできません。
以上のことから、本件は本校個別の問題にとどまらず、県立高校における教育民泊の安全管理、重大事故時の責任体制、生徒本人の意思確認、保護者への事前情報開示等にも関わる問題であると考えています。
そのため、今回学校からご提示いただいた資料及び今後のご回答を含め、これまでの経緯を埼玉県教育委員会へ情報提供し、県としての安全管理基準等についても提案させていただく予定です。